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「星野が目指す場所は、この場所で聖の人たちと生きていくことだ。
そのために俺は医者としてもっと上を目指す。」
聖時が自分の未来を語る。
「誰も幸せにならない結婚はしない。」
とても芯のある声音で。
「アハハハハ。」
それでも知事は俺たちを受け入れない。
そんな簡単に受け入れてくれるとも思ってはいないが。
知事は見下したように大きな声音で笑う。
「私を敵に回して、それが実現できると思っているのかね。
君なんて捻り潰してやるよ。」
鋭い瞳が聖時を睨み付ける。
知事は本当に聖時が憎いようだ。
……俺に対してよりも当たりがキツイ。
「受けて立ちますよ。」
聖時が挑戦状を受け取った。
クックッと知事は笑いを零し言葉を続けた。
「今朝、君たちの父上からも今回の話はなかったことにして欲しいと言われたよ。
親子揃ってどうしようもないね。」
そう言葉を吐き出して目の前のコーヒーカップに手を伸ばし、伊部さんの淹れたコーヒーを口に含んだ。
「せいぜい頑張りたまえ。」
そしてソファから立ち上がった。
知事!……俺が声を掛けようと口を開いたところで先に聖時が声を出した。
「ああ、知事。」
去って行く知事の後ろ姿に聖時が声をかけた。
知事は俺たちに視線を向けることなく身体だけ止めた。
「悠子さんが好きな男は俺ではありませんでしたよ。
馬鹿な俺は2年も騙されていました。」
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