全てを守るための決断

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 俺の問いにフンと鼻を鳴らす。 「お前たちにこれからがあるわけなかろう。  星野はもう潰れるほかないのだから。」  その無神経な言葉が脳の芯を痺れさせる。  腹が立つどころの話じゃない! 「……見てろよ……」  両手を握りしめて呟いた。 「負けませんよ。  知事は兄貴の実力を知らない。  この男はやると言ったらやる男ですよ。  弟の俺が言うのもなんですけど、俺は誰よりも兄貴を信頼している。」  聖時の言葉に心底驚いて思わず聖時に視線を向けた。  いつも生意気で……  俺の言うことを素直に聞いたことなんて一度もない。  その聖時からの誉め言葉。  フッと笑いが込み上げて。  強い瞳で知事を見据える。 「俺と聖時で成し遂げて見せますよ。  必ず。」  知事はもう何も答えずに、フンと鼻だけ鳴らしてこの部屋を後にした。
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