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勝ったのか負けたのか
その勝負はまだわからない
でも……
聖時と悠子さんの婚約は破談になった。
それだけは確か。
今日の一番の目的は"それ"だったから……
目的だけは果たしたのだろうか。
轟の屋敷を後にして、工藤の待つレクサスへ戻る。
この寒空の下、工藤はレクサスの前で俺たちを待っていた。
俺と聖時に気付くと工藤は背筋を伸ばした。
「お帰りなさい。」
工藤は俺に視線を向けて声をかけた。
「幸運は現れましたか?」
……幸運か
工藤の言葉に ふ~、と大きく息を吐きだした。
「工藤の言う通りだ。
幸運は自分で手繰り寄せなきゃいけない。」
そして、聖時に視線を向ける。
「ここからだ。
聖時……俺は絶対に負けたくない。」
力強く言葉にして熱い瞳を向けた。
「ああ勿論。
俺も負けるつもりなんて毛頭ない。
クソ狸をケッチョンケチョンにしてやろうぜ!」
聖時の言葉に小さく笑って聖時の肩を叩く。
「……聖時さんって……そんなキャラでした?」
工藤が言葉を挟んでくる。
「そんなキャラって何だ?」
聖時は訝しい表情で工藤に聞いた。
「ケッチョンケチョンとか……
そんなこという人今時いませんよ。」
工藤はそう言って砕けて笑う。
「……笑いすぎだ。」
聖時は小さな声音で言い返した。
穏やかになった聖時。
聖時を変えたのは……
「静かな月も星の煌きに更に輝きを増す。
聖時を変えたのは、彼女の存在だ。
いいだろ。
こんな弟も。」
そう言葉にして二人に笑う。
工藤はニッと口角を上げた。
「俺は秘書としてお二人をどこまでもサポートします。」
工藤はちゃんと聖時を受け入れた。
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