全てを守るための決断

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 以前とは違う聖時を……  きっと工藤なり理解してくれたに違いない。 「ああ、頼むよ。」  工藤に小さく笑って答えた。  聖時は工藤の言葉に満足そうにフッと笑う。 「負ける気がしねえ。」  聖時の強気発言を聞いて、レクサスに乗り込んだ。  工藤の運転するレクサスが快調に走り出して暫くしてから聖時が車内の静寂を破った。 「兄貴、話しておきたいことがある。」 「何だ?」  聖時に向いて訊ねた。 「実は……  ブランのオペチームに誘われた。」 「え!?」  一瞬何を言われたのか理解出来なくて。  ブランの……オペチーム? 「それって……?」 「アメリカで一緒に仕事をしないか、って。」 「おお!」  聖時の言葉に真面目に驚いて。 「いいじゃねえか!  ゴットハンドに誘われるなんて夢みたいじゃねえか!」  本当に嬉しくて自分のことみたいにテンションがあがってしまう。 「……喜んで…くれるのか……?」 「当たり前だろ!  喜ばなくてどうするんだよ!  めちゃくちゃいい話じゃねえか!」 「兄貴……行ってきてもいいのか?」  聖時の声音に遠慮が帯びる。 「こんな状態の星野を残して……」  あの聖時が……  星野の未来を心配している。  そのことに胸が熱くなる。    だけど。  きっと……  真剣な表情を聖時に向けた。 「聖時。  お前が迷ってるのは星野のことだけが理由じゃないんじゃないのか?」  俺の言葉に聖時は明らかに言葉を詰まらせた。  それがきっとビンゴだから。
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