全てを守るための決断

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 言葉を詰まらせた聖時に俺の気持ちを伝える。 「確かにお前がいなけりゃ、困る部分は多い。  今からすぐに行くのか?」  その質問に頭を横に振った。 「すぐには無理だ。  大学での仕事もある。  行くとしても来年の4月以降だ。」 「期間は?」 「1年。」  1年……  たった1年。  だけど……  このタイミングで1年か。 「……1年でブランの技術を叩き込んでくれる。  帰り際にそう言われた。」 「……4月か……」  だけど。  これは星野にとって大きなチャンスだ。  星野をこれからもっといい病院にするためには今のままじゃいけない。  "絶対的な条件"がある。  聖時が居なくなるまでの4カ月。  俺は今からどう動いていくべきか……  頭の中がグルんグルんと回転を始める。 「それまでに何としても形を造る。  基盤が整えば聖時が居なくても何とかなる。  親父もまだまだ働くみたいだしな。」  聖時にフッと笑う。 「後はお前の問題だろ。」  ブランの元でオペの腕を磨くことは  聖時にとっても  星野にとっても  プラスにしかならない 「星野を守り続ける為にはお前が"腕のいい医者"になることが絶対的な条件だ。  ブランの下で手術の腕を磨けるなんてこの上ない奇跡だろ?」 「……そうだな。」  聖時は浮かない表情で小さく頷いた。    ……それほどまでに……離れたくない相手。ってことか    聖時にひとつの提案をする。
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