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どうすることもできない逃れられないような自己嫌悪の渦へと、孤独の淵へと。
カイは沈み込んでいく。
「違うよ、カイ」
あたかも、天からの光の梯子めいて。
瑞々しくも、若く素直な声が、カイへと降り注ぐ。
「違うんだ、カイのせいじゃない。あなた独りで、世界のすべてを救うことはできない。僕たちは、世界を救えない」
フィンがそっと、カイの髪に触れる。
「ねえ、カイ。世界中の爆弾を、僕が解体して回ることはできない。僕たちは、世界なんか救えない。そんなことしなくていい。救わなくってもいいんだ……」
そして、フィンが続けた。
「泣いて、カイ。泣いていい……独りでは泣けなくても、誰の前で泣けなくても、僕の前で泣いて」
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