58

3/3
539人が本棚に入れています
本棚に追加
/307ページ
 どうすることもできない逃れられないような自己嫌悪の渦へと、孤独の淵へと。  カイは沈み込んでいく。 「違うよ、カイ」  あたかも、天からの光の梯子めいて。  瑞々しくも、若く素直な声が、カイへと降り注ぐ。 「違うんだ、カイのせいじゃない。あなた独りで、世界のすべてを救うことはできない。僕たちは、世界を救えない」  フィンがそっと、カイの髪に触れる。 「ねえ、カイ。世界中の爆弾を、僕が解体して回ることはできない。僕たちは、世界なんか救えない。そんなことしなくていい。救わなくってもいいんだ……」  そして、フィンが続けた。 「泣いて、カイ。泣いていい……独りでは泣けなくても、誰の前で泣けなくても、僕の前で泣いて」
/307ページ

最初のコメントを投稿しよう!