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すでに勘所をわきまえているフィンの愛撫は的確すぎて、噛み殺しきれなくなりつつある呻きが、カイのくちびるから荒い呼吸とともに洩れ出していた。
まだ、かろうじてスラックスの内に隠されている男の部分は、すでにみっともなくも勃ち上がり切って、薄いとろみを滴らせている。そして、そのことがカイの身体を、快楽だけではなく羞恥で金縛りにしていた。
「このままじゃ、汚れてしまいますね、少佐、素敵な服なのに……」
フィンが言う。
同じことを、確か前も言われたと、カイは、ぼんやり思い出した。
そして、カイのベルトのバックルが外され、ファスナーが下ろされる。
下着は、すでに濡れていた。
くちびるが、さらに下へと動き始める。
フィンはごく手早く、下着ごとカイのスラックスを引き下げると、あらわになった内腿へと口づけた。
何一つ押さえるものも纏うものも失くした陰部が、ビクリと大きく痙攣する。
次に何をされるか。
カイには漠然とした、けれども確かな予感があった。
そうだ。
同じことを、俺はされた。前に。
まったく同じように。あの夜に――
そしてカイの予想どおりに、カイの熱を帯びた部分が、もっと熱いどこかへと含みこまれる。
フィン・ギャラハーの口腔へと。
鮮烈な刺激に、激しく身をよじるカイを、フィンが手慣れた腕でやわらかく抑え込んだ。
それが男の口だとか、明確な同意のない口淫だとか。
そんなことを白く消し去ってしまいそうなほどに、圧倒的な快感がカイを襲う。
抗えない――
あの時も、抗えなかった、俺は。
これに、この愛撫に。
透明に目を開け瞬きもせず、無心にカイを慈しむフィンの表情を見下ろして、カイは震える吐息を絞り出した
その瑞々しいうなじに蠢く片翼のタトゥーへと、カイは自らの指を伸ばし、そっとそれをなぞる。
ふと、フィンが愛撫を止めて、カイを上目遣いに見た。
「少佐、ちゃんと覚えていてくださってるじゃないですか……そんな風に、僕に触れてくれた。あの時も、そうやって」
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