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55  ――「あれ」以来。  カイからの連絡は途絶えていた。  忙しいのだろう。当たり前だ、そんなことは誰にだって分ること。  だから、カイの方から連絡が来るまでは、決してうるさくすまいと。  フィンはそう心に決めていた。  支援センターでの研修も本格的に動き出していた。    ともかく、今は自分のやるべきことに専念しよう……と。  フィンは日々、それに打ち込んだ。  前々から何とは無しに、自分の中でも分かっていたことだったが。  あの時、カイとともに、部屋の床を磨き上げながら、フィンは、その作業に没頭し、楽しんでいる自分に改めて気づいていた。  僕には、あんな風に身体を使う仕事が、きっと向いているのだ。  そして、ただ身体を使うだけではなく、工夫して設計して「何かを作り出す」なら、多分もっといい。    建築に配管、電気系統。  図面の引き方も見方も、さらには、それらを実際に組み立て上げるまでのことも。  どれも工兵時代に、叩き込まれたことばかりで、手にも頭にもなじみはあった。  だが、実際に社会で、それを生かすには、幾つかの資格が必要になる。  フィンは、試験のための講義へも通い始めた。  座学など、ごく久方ぶりのことで、じっと人の話を聴くということにも、始めはひどく骨が折れたが、とにかくなんとか通い続けていた。  やはり、実習が一番楽しい。  最近では、指の震えも幾分かマシになってきた気もしていた。  爆弾の解体をしろと言われるのでなければ、もう、さほどの不都合はないのかもな……。  
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