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59  完璧な形の顎を上げて、カイがフィンを見る。  そのブルーグレーに揺れる瞳を。  虹色の光を纏う金の髪を。 「来て、カイを抱きたい」  フィンが囁いた。  だがカイは、途方に暮れた少年の目で、ゆっくりとかぶりを振る。 「駄目だ、カイ。僕はカイを抱くよ。おいで、ここに」  フィンの指が伸ばされて、カイの顎に喉の突起に、鎖骨の窪みに触れていった。  ビクリと、カイの身体が痙攣する。  フィンがソファーのサイドテーブルに置かれているスマートフォンに目を止め、それに手を伸ばした。 「ほら……あなたの電話はここにある。大丈夫。もしも鳴ったら、今度は、僕がちゃんと気づくから。心配しなくていいんだ。カイ、何も心配しなくていい」  耳元に指が滑り入ってくる。  それを感じた刹那、カイは、自らのくちびるが目の前の男に奪われていくのを感じた。  やわらかく潤んだ、甘い果実めいた口づけ。  くちびるをくすぐられ、啄むように吸われ、軽く歯を立てるように齧り取られて。  焦らされて……。  「焦らされている」と。  そう感じる自分自身に、驚き、そして恥じらって、でもそれでも堪えきれずに、カイはついに口を開いた。
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