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1  とりとめもない考え事を肴に、スコッチで喉とくちびるを湿らせる内にうたた寝をしていたカイは、スマートフォンのバイブ音で目を覚ました。  ソファーの上で居眠りなどという自堕落は、独り暮らしの気楽さとはいえ、出自からして規律を叩き込まれた身としては、いささか気まり悪い心地にもさせられた。  カイはクシャリと前髪を掻き上げながら、ひとり苦笑を浮かべる。そして、画面をスライドしスマートフォンを耳に当てた。 「リーデルだ」  ――遅い時間に失礼します、スナイデルです。 「ああ、久しぶりだな……どうした?」  着信画面を見れば相手は解るし、夜もまだそこまで更けてはいない。  かつての後輩の律儀な挨拶に、カイの喉元に、思わず小さな笑いが込み上げる。  ――もし大尉が……失礼しました、少佐がご存知でしたら、教えて頂きたいことがありまして。  これまた律儀に階級を訂正するスナイデルの声。  カイの脳裏に、眉根を固くした四角四面のスナイデルの表情がありありと浮かぶ  カイ・デ・リーデルは、確かに「少佐」ではあったが、軍人ではない。  国家警察(ポリティーデン)では、その前身であった軍警察(コーマール)からの流れで、階級の呼称が陸軍風のまま残っているというだけだ。
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