3/5
前へ
/307ページ
次へ
 スナイデル准尉は、随分前にカイと同じセクションにいた男だ。  ヤツも異動して、たしか今は警備部門のどこだかに配置されていたはずだが……。  カイがそんなことを考えた瞬間、スナイデルがこう続けた。  ――爆発物処理の技能と経験が豊富な人材を探しているのです。  スナイデルの言葉は、カイの耳にひどく意外に響いた。   「国家財政の逼迫度は俺も知ってはいるがな、警察の機動部隊にも爆発物処理班くらいあったように思うが」  皮肉まみれの受け答えが、カイ・デ・リーデルの得意技であることなど、リーデル少佐との付き合いの有無にかかわらず、警察(ポリティーデン)の者なら誰でも知っている。そうでなければモグリだ。  それはそうなのですが……と、スナイデルが言葉を詰まらせる。     カイが、かつての同僚であるスナイデルの所属を、今はっきりとは知らないのは、単純に、その詳細があまり公にはされていないからに他ならない。  そして、そのことから推察されることは、そう多くない。  つまり、スナイデルはおそらく、警備部門の中でも、特に都市部での対テロ作戦に関与する任務に就いているのだろう――  実のところカイも、以前から漠然とそんな風に考えてはいたが、今、この通話で、その「予想」は「確信」へと転じた。   こんなに唐突に、しかも、俺のプライベートの番号へと通話して訊ねてくるくらいだ。まだ公にはしにくいが、急を要する何かが起ころうとしているのか……。
/307ページ

最初のコメントを投稿しよう!

558人が本棚に入れています
本棚に追加