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スナイデル准尉は、随分前にカイと同じセクションにいた男だ。
ヤツも異動して、たしか今は警備部門のどこだかに配置されていたはずだが……。
カイがそんなことを考えた瞬間、スナイデルがこう続けた。
――爆発物処理の技能と経験が豊富な人材を探しているのです。
スナイデルの言葉は、カイの耳にひどく意外に響いた。
「国家財政の逼迫度は俺も知ってはいるがな、警察の機動部隊にも爆発物処理班くらいあったように思うが」
皮肉まみれの受け答えが、カイ・デ・リーデルの得意技であることなど、リーデル少佐との付き合いの有無にかかわらず、警察の者なら誰でも知っている。そうでなければモグリだ。
それはそうなのですが……と、スナイデルが言葉を詰まらせる。
カイが、かつての同僚であるスナイデルの所属を、今はっきりとは知らないのは、単純に、その詳細があまり公にはされていないからに他ならない。
そして、そのことから推察されることは、そう多くない。
つまり、スナイデルはおそらく、警備部門の中でも、特に都市部での対テロ作戦に関与する任務に就いているのだろう――
実のところカイも、以前から漠然とそんな風に考えてはいたが、今、この通話で、その「予想」は「確信」へと転じた。
こんなに唐突に、しかも、俺のプライベートの番号へと通話して訊ねてくるくらいだ。まだ公にはしにくいが、急を要する何かが起ころうとしているのか……。
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