魔王が世界を半分くれるらしいんだが。

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「まず、こちらの世界地図をご覧ください」 勇者の声に合わせ、魔法使いの女性と賢者の少女が大型の紙を広げる。そこに記されていたのは世界地図で、大陸の形と海の潮目などが正確に記されていた。勇者は剣ではなく指し棒を抜きながら、その地図の表面を軽く小突いた。 「この世界において陸地は30%、海は70%です。しかもその30%の陸地においても、人が住め、働ける地域など50%にも満ちません。しかも大陸全体に万遍なく暮らしてる住民をそんな狭い面積に押し込めるとなるととても暮らせません。その辺はどう対処なさるつもりですか」 「そ、そこまで考えたことは…ゴ、ゴホン!開拓すればよかろう。我が配下の闇魔術師どもを総員して地属性魔法を使い、海底を隆起させれば陸地を広げることも容易い」 「なるほど、埋め立てで面積を増やすという訳ですね」 「強引すぎるなぁオイ。大体よ、魔王さん」 すると、大斧を担いだ戦士の男が声を挙げた。 「食料はどうするんだよ。飯もいらねぇアンタらにはわからねぇかもしれねぇが、面積が半分になっちまったらその分生産量も減るんだぞ。世界の支配者になるってことは、国民を養うっていう義務もあるんじゃねぇのか」 「し、知るものか!我ら魔物は食事もいらぬ故」 「はい、言質取りましたー。これ世界半分譲渡が可決された後こっちの王様に聞かせるからね」 「あっお前いつの間に!」 出し抜けに言い放った、一見子供にしか見えない賢者の少女の手の上に光の球が浮き、周囲には音符が浮かんでいた。どうやら音を記憶する術のようで、魔王は驚愕する。 「これは暴言ですね、間違いない」 「これでマスコミに袋叩きにされればいいわ」 「黙れ!というか報道機関とかないだろお前達!」 嫌にメタな言葉に激怒する魔王。息を荒げるところへ、眼鏡の勇者が追い打ちをかける。 「面積が半分に減少することで我が国が被る経済的損失は70%です。そのほとんどが農業と漁業の第一次産業となっています。ただこれも魔王軍さんサイドが『世界の半分』というのをどこまでとするか、でも変動しますが」 「つーかそもそも、魔物どもはどうやって今まで生活してたんだ?産業っつーのかよ、その辺気になる所だよな」 「では、次の議題は『魔王軍側の産業制度について』です。答弁をお願いします、魔王くん」 「馴れ馴れしいな勇者貴様!!」
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