魔王が世界を半分くれるらしいんだが。

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「そもそもだ。我々は食事を必要としないという側面上、2次産業しかしておらぬ。武具の生産やこの魔王城建設という公共事業が主だ。1次産業の減少など、少なくとも我々には関係のないことであって」 「まぁ、今までの魔王も言ってた事から鑑みると、仮に勇者が下ったとしても人類を奴隷代わりに働かせる腹積もりだったんでしょうがね」 冷めた口調で遮る勇者。魔王が一瞬口をつぐんだ所に、勇者が畳みかける。 「ただ、それにしても人間には食糧と住む所が必要です。あなた方魔物のように、飲まず食わずでは生きられないし、氷点下の洞窟や火山では生きられません。そうなると必然的に住みやすい場を選択しなくてはならないのですが、魔王さんサイドではどうなんです?」 「くっ……」 なんだこの勇者。聡明な魔王をもってしても、この以上にしつこく理屈っぽいタイプの相手とは初めての邂逅だった。百の高等魔術を自在に操る脳を懸命に回転させ、勇者の問答に答える。 「……この魔界全土、ここと汝らの国に跨る嵐の海域、氷山地帯に火山。そこ以外ならば良い。そこは我々の武具を生成する鉱石や魔法石が眠ってる地ゆえ、譲れぬ」 「今と変わんないじゃないそれ」 「魔王謙虚だな」 必死に考え出した答えは、図らずも現状維持であった。しかし、人間界の王都周辺には法王による強固な結界が張られており、魔王であっても近づけない。それだけでなく、暗闇や極地の中であるほど真価を発揮できる魔族にとっては、平和な世界では暮らしにくいという側面があったのだ。 「…確かにそれを鑑みると、ほぼ50%ですね。むしろ人間側にお釣りが来るレベルです」 そろばんを打ちながら、そう唸る勇者。何やら雰囲気が変わり始めたのを見て、魔王の鈍色の皮膚に冷や汗が流れた。 「お、おい待て…」 「じゃあ、最後の質問です。世界を二分するということは、二つの国家ができるということですが…不可侵条約を結ぶというのはいかがでしょう」 「何ッッッ」 勇者が、これまで各地で蛮勇を振るい己の策略を邪魔して来たにっくき勇者が。ここに来て和解を求めだした。その前代未聞の衝撃は、決して小さくないショックを魔王に与えたのだった。
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