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「だって、こっちは住めない所を提供するんですよ。あなた方も安定した資源の供給ができる。ウィンウィンじゃないですか。ともすればこちらが望むのは、これ以上我々人間の世界に介入しない、襲わない。そんな平和的解決方法だけなんですよ。もっとも、そちらが海の70%の内50%を欲するというのでしたら、排他的経済水域が減少してしまいこそしますが陸地が完全に確保できますのでそっちの方がありがたいですが」
「ぐ…な…」
すると、そこで魔王が背を向けた。そこで初めて脇に立て掛けられていた漆黒の大剣を手に持ち、玉座に向かって力強く振り下ろしたのだった。
「もぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ひっ!?」
豪奢な玉座が粉々に砕け散り、魔王がこちらを振り返る。何故か鈍色の顔面にギョロリと輝く真紅の三白眼からは、大粒の涙が零れていた。
「なんか、我…否!俺と思ってた勇者と違う!何なんだ!何なんだよお前ェ!なんでそんなネチネチネチネチいつまでも追及してくんだよぉ!!」
突然子供がダダをこねるように叫び出した魔王を見て、勇者は瓶底眼鏡をはずしながら向き直った。
「当たり前だろ。こっちは王の勅命を受けて動いている…つまり俺達は公務員なんだ。俺達が生きるために、そのくらいはっきりさせないとやってられんだろ」
「そして、無駄な軍事費を省く計らいもあります。僻地に追いやれ、かつ争いも起きないのであれば、それに越したことはありませんから」
魔術師の援護も受け、勇者が畳みかける。
「なあ、魔王。父ちゃんも爺ちゃんも、同じ質問を先代の魔王から聞かされ続けて来た。そして二人が断った理由は、たとえ飲んでも人類側にメリットがないってわかってたからだ。『勇者だから』だとか、『正義感のため』だとか、そんな直感的な理由なんかじゃない。だから、少し前置きが長くなったけど…勇者としてはこう答えてやる」
そして腰から一振りの聖剣を抜き、魔王に向かって勇者が声を張り上げた。
「もらってもメリットがないから、断る!!ていうか冷静に考えたら、面積半分だしね!デメリットしかないじゃん!!バーカ!!!」
「勇者さぁ、せめて『断る!』は最後に言った方が良かったんじゃない…?」
「こういうのは勢いなんだよ、賢者ちゃん!ていうか、慣れない堅苦しい言葉遣ったらなんか肩凝った!」
魔王を前にして、和気藹々と話す勇者一行。
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