魔王が世界を半分くれるらしいんだが。

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それによって孤独を刻み込まれたような気がした魔王は涙を拭うと、力任せに大剣を床に叩きつけた。床が砕け散り、赤絨毯が一瞬で糸くずと化す。そして全身からくまなく闘気と殺気と魔力をまき散らしながら、4人の偏屈勇者へと向き直る。 「…では交渉決裂だ。歴代の魔王はすべからく勇者に問答をかけ…最後は剣と術の腕を比べた死合いをしたものよ」 「そして、その度人間が勝ってきた。正義は勝つし、守るべき存在がいるっていう意味じゃ人間の方が強いってことかな」 「……フフ、実に惜しい。お前のような勇者は言い伝えでも聞いたことがない。お前のような切れ者が我が軍にいれば、この世の征服も夢ではなかった」 「じゃ、さっきの議題の続きをですね…」 「もういいわ!ていうかそのふざけた眼鏡は仕舞え!!」 瓶底眼鏡を取り出しかけた勇者を大声で牽制する魔王。勇者は少しおどけた表情を浮かべると、今度こそ剣を強く握りしめた。 「じゃあ、始めようか魔王。俺達の世界が生き残るか」 「我が軍がお前達の世界を蹂躙するか」 ――雌雄の決する時!! ~*~ かくして、不倶戴天の好敵手たる双者が激突する死闘が幕を開けた。夜明けが訪れるのは果たしてどちらの信念なのか、その行く末は勝利の女神のみが知る。
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