本城真一(30)

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あ、いたいた。 おーい。こっちこっち~。 良かった。 もう帰っちゃったかと思ったよ。 ん?何でここにいるのかって? 君、今日傘持っていくの忘れたでしょ。 帰ってきたら玄関に引っ掛かったままなんだもん。 すぐ気付いたよ。 こんな雨でもね、風邪引くことだってあるんだよ。 体調管理は日々の積み重ねだよ。 ん? なのに傘自分のしか持ってない? 鈍感だなぁ。 相合い傘しようと思って来たんだよ。 はははは。 そんなに照れないでよ。 たまにはこういうのもいいでしょ。 ほら、入って。 うん。いい子いい子。 なんか… 色々思い出すね。 最初のデートの時も雨でさ、傘がぶつかり合って、お互い気まずくて。 その内君が 「もう相合い傘にしませんか!?」 なんてそりゃ真っ赤な顔で言うから、僕思わず笑っちゃってさ。 真っ赤な顔した君が、あまりにも一生懸命で、真っすぐで、可愛かったから。 それから雨の日のデートは、いつもより嬉しかった。 また、あんな君を見れるかと思うと、嬉しかった。 でも、お互い歳を重ねて、いつしかこんなこともしなくなって。 ちょっと寂しかったりもしたんだ。 だけど今日は、君が傘忘れてくれたおかげで口実ができた。 相合い傘する口実が、ね。 僕ね、いますごく嬉しいよ。 初めての君と相合い傘した時と同じくらい嬉しい。 ね。 これからは、雨の日の帰りは相合い傘しようよ。 だめ? ふふ。 じゃあ約束だよ。 もし破ったら… そうだなぁ。お姫様抱っこしながら家まで帰るってことで。 あははははは。 痛い、痛いって。 大丈夫だよ、冗談。 でも、相合い傘は絶対だよ? よーし。 決まり決まり。 あ、大切なこと言い忘れてた。 おかえり。
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