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――私と姉は、同じ時に生まれた。
本当は、双子になるのだろう。
本当でなくても、双子になるのだろう。
"本当に、双子なの?"
でも、そう問いかけられることが日常なくらい、姉と私の容姿は幼い頃から大きく異なっていた。
姉は、銀の髪と、脱色したような白い肌を持っている。うっすらと見える赤い血管の影が、陰鬱だけれど、美しい絵画のような印象を与えてくる。
弱点ばかりを持っている姉だが、その容姿と微笑みは、同性異性を問わずにあらゆる人々を魅了した。それこそ……異常な想い入れを持つ人間を、生み出してしまうくらいに。
――私は、姉にあった血を奪い、生まれたような見た目だった。
小麦色の肌に、黒いショートカットの髪をして、走ることが好き。明るい日差しの下、全力で足を駆けるのが好きだった。
(……姉は、私みたいに、ヒステリックにはならないものね)
それでも私達は、好きなものや楽しいことが重なることも多く、一緒にいるだけで楽しかった。
――それもあの日、姉が吸血を必要とし始めてからは、少しぎくしゃくしてしまっているけれど。
父と母は、姉に優しい。もちろん、私にもだ。
幼い頃の姉は、父と母から血を奪い、命の危険を与えたこともあった。
それでも、父と母は、姉を恨むことはない。
学校への送迎や、相談や、病院通いなど、面倒を惜しまない。
それで、私が蔑(ないがしろ)ろにされているかというと、そんなことはない。
姉と同じくらいに、私も、一緒に愛されてきたという想いはある。
――私は、幸せなのだ。
――なのにどうして、胸の内に欠けているような気分が、居座り続けているのだろう。
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