一輪を夢見て

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※※※ 「――雨だ」  しとしとと世界に満ちる音は、憂鬱を感じさせる。ましてや病院は、その気分を深くさせる。白い建物の影はより深くなり、人の疲れが満ちているように想えてしまう。  ただ、姉にとっては、安らぐ天気でもあるらしい。強い陽光がなく、身体が落ち着くからと言っていた。……結局、流れ水で痛みを感じるため、車などの移動は必須なのだけれど。 「お待たせ。疲れてない?」  定期検診が終わった姉が、私へと呼びかける。 「……私は、ぜんぜん。姉さん、調子はどうなの」  ぶっきらぼうに、私は姉に聞く。 「先輩の調子は、よさそうですよ」  ――返ってきたのは、別の声。  先輩だなんて言う人間は、さっきまでいなかった。 「……その子は?」  父や母とともに姉の横へ立つ、見知らぬ少女。 「一ノ瀬静流さん。学校の後輩で……新しい、私のパートナーよ」  姉の口からそう告げられて、私はようやく、今日ここに来た理由を知った。  ――パートナー。  姉を支え、姉を見守り、必要であれば迅速な対処を行う。  国と医療機関により、お伽病患者のために選ばれた、特別な相手。
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