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※※※
ある日、姉は閉じこめられた。
憧れだったと語る、パートナーに。
"私が責任を持って、先輩をお送りしますから"
その言葉を信じ、見逃してしまったのが、いけなかった。
私が気づいた時には、もう二人の姿は消えてしまい。
焦る耳に、聞こえてきたのは――姉を閉じこめた、少女の絶叫。
(昼は、大丈夫そうだったのに)
予想した事態なら、計算日よりずっと早い。なら……無理矢理に、だろうか。
――定期的に姉へ訪れる、血液への渇望。餓えを満たすには、人の血が必要だった。
直接、人から血を吸うわけにはいかない。法律的にも倫理的にも、認められることではなかった。研究が進み、感染性よりも遺伝的な要因が高い病だと、わかってきてもだ。
だから姉の主食は、与えられた血液パックと、少量の野菜。それで姉は、高校生活をなんとかやり過ごしてきた。
――それでも姉には、パートナーが必要だった。必要とあれば、手首を刃物で削り、紅い雫をこぼしてくれる、優しきパートナーの存在が。
「……っ!」
悲鳴が聞こえたドアを消火器でこじ開け、中へ踏みいる。
ほこり臭い部屋で、私の眼に映ったのは――いつかの日を再現したかのような、紅い世界。
真っ赤にそまった姉と、青白い顔で歯を震わせる、後輩の姿がそこにあった。
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