春爛漫2 睦月純也

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茂くんは店の前掛けを外してぐるぐるに纏めると自分で生ビールを注ぎ、俺の隣に腰掛けた。 「菊さん、お疲れビール頂きます」 「ん、お疲れ」 「仕事上がりのビール一杯、菊さんがご馳走してくれんだ。その代わりこき使われても文句言えねぇんだけどさ、お疲れ睦月くん」 乾杯と言う乾杯もせず、そう言うと茂くんはぐびぐびと 美味そうにビールを飲み込む。 俺もジョッキに残ったビールを飲み干した。 「これ。茂と一緒飲めよ」 カウンター越しに宗介さんから渡されたのはワインクーラーの中でキンキンに冷やされたワイン。 前にワイン飲んでみたいって言ったの覚えてたんだ…… 茂君がグラスに注ぐと金色の液体の中は プチプチと少し発泡している。 「これ去年もこの時期に確か飲んだ奴っすよね?美味いんだよな~~」 「俺ワイン初めてだけど飲めるかな……」 「睦月くん、これワイン初心者にオススメだと思う!」 「知り合いが国内のワリナリーに居て、送って貰ったんだよ。国産ブドウ100%を使った発泡性白ワインで、ブドウは甲州種。ブドウを低温で発酵させて、そのまま瓶詰めすっから、瓶の中で発生した二酸化炭素がガスになるって訳。いわゆる“田舎式”だな」 宗介さんはいい加減なヤツに見えてこういう所詳しいんだよな……     
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