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天城は屍町で探偵を営んでいた。北関東にある片田舎で、駅前にはコンビニもない。 天城は派遣社員もしていた。探偵だけじゃ食べていけない。 天城は沈鬱な表情をしている。 微かに溜息を吐いた。 昨日は池袋に行ってきた。 ロマンス通りで巨大な蛇を見た。 ピュトンっていうギリシア神話に出てくる怪物だ。 見たものに予言の力を与える役目を担っていた。 振り子時計が3回鳴った。 コーヒーでも飲もうかな? 徹夜はマジでツライ。就職試験の勉強をしていた。 チャイムが鳴った。 鳥肌が立つ。 こんな時間に誰だ? 窓辺に立つ。闇の向こうに寂れた工場街が見える。 最近、隣町で殺人事件があったばかりだ。 殺されたのは女教師で右眼をくり抜かれていた。 壁に備え付けられたモニターを見た。 胸を撫で下ろした。 恋人の沙織だった。 大学のとき同じ歴史サークルに所属していた。食品工場で働いている。 忙しくて最近エッチもしてない。 ドアを開けた。 沙織の顔は真っ青だった。 「風邪でも引いたのか?」 「恵那がいなくなった」 恵那は沙織の妹で法政大学に通っている。 天城は恵那が生きていないことを感じた。 町の西側にある汚水処理場で死体となって発見された。 犯人は恵那の中学時代のクラスメイト、高島寛だった。 高島は酷いイジメを受けていた。 恵那に思いを寄せていたが彼女にまで嫌われた。 担任の玲子を殺し、彼女になりすまし恵那を殺した。 事件解決に協力した天城は新聞に載り評判も上がった。 屍町に新たな悲劇が訪れる予感に天城は震えていた。
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