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エピローグ(6日目)
トゥルル、トゥルル。
「はい。○○サポートセンターです。」
「あのー。○○アパートに住んでる前田という者ですけど。」
「はい。前田様、何でしょうか。」
「聞きたいことがあるんですけど。」
「何か問題でも起きましたでしょうか。」
「お隣のことなんですけど。」
「お隣………ですか。」
「はい。どんな人が住んでるのかと。」
「それは……。」
「毎日、夜になると、変な音が聞こえてくるんですよ。204号室から。」
「204号室ですか……。」
歯切れが悪い。
「205号室のおじいちゃんは、204号室の人はいい人だって言ってるんですけどね。」
オペレーターが息をのむ音が聞こえた。
「どうしたんですか?」
「前田様、そのアパートの2階、入居しているの、前田様だけですよ。」
え?何を言っている?
「5年前に、火事がありまして、前のアパートは全焼しました。その際、2階に住んでおられた方は逃げ遅れて、全員亡くなられました。」
「その後、2年前に新しいアパートが建てられまして、2階の住人は皆さん、短期間で出て行ってしまうものですから、現在の入居者は前田様、お一人です。」
もうオペレーターの声はあまり耳に届いていない。
代わりに、あの音と、声が………。
ドンドン。ドンドン。
タスケテ……。タスケテ……。
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