プロローグ(一日目)

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プロローグ(一日目)

   6畳の1Kで3万円。破格の家賃のアパートだった。  何かあるのだろう。それは分かってはいたが、背に腹はかえられない状況だったので、引っ越すことにした。  203号室。それが、僕がこれから住む部屋。2階に並んでいる5つの部屋の真ん中の部屋。見た目は綺麗で、そんなに古いという印象もない。 「何でこんなに安いんですか?」 「まあ。色々ありまして。」  不動産屋の歯切れが悪い。 「幽霊とか出るんですか?それとも誰か自殺したとか。」 「そういうことではないんですけどね-。」 そんな会話を思い出しながら、階段を登る。2つ部屋を通り越して、扉の前に立った。不動産屋から預かった鍵を取り出す。  カチッ。  扉を開けると、狭い玄関の先に廊下が続いている。靴を脱ぎ、廊下を進む。途中のユニットバス、キッチンを横目で見て、奥の部屋に進んだ。  フローリングの床、キッチン側の壁にクローゼット。当たり前だが、他には何もない。  午後1時、そろそろ引っ越し業者が来るはずだ。  まだ何もない床に座り、煙草に火を付ける。半分くらい吸ったところで、チャイムが鳴った。  玄関の扉を開けると、引っ越し業者が2人で来ている。 「じゃあ、お願いします。」 「はい。分かりました。」  業者の作業は一時間ほどで終わった。  今日は少し疲れたので、とりあえず必要なものだけ出して、止めよう。そう思って、段ボール箱から、必要なものだけを取り出した。  すぐ終わると思っていたのだが、予想より時間がかかってしまって、時計を見ると7時を過ぎている。  今から料理を作るのも億劫なので、コンビニで済まそう。  コンビニから帰って、テレビを見ながら、弁当を食べた。食欲が満たされると、体は正直なもので、睡眠欲がいきなり出て来た。思ったより疲れていたようだ。  毛布だけ取り出して、横になる。すぐに眠りについた。 コンコン……。 コンコン……。  
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