記憶

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涙を散々流し終えた私は、優を記憶にとどめながら、自分の人生を大切にしようと心に誓った。 仕事に打ち込む日々。 毎日9時に出社し、22時に退社する生活を繰り返し、次第に優のことは忘れるようになった。 帰宅してつけるテレビ。 毎日面白くも感動も何もないテレビの番組をみながらボーっと過ごす。 レンジで温めたささみを細々と食べながら、片手にビール。 ぷはーっ!と大きなリアクションを取りながら、ビールを飲む。 今週も頑張った! 週末は買い物して、映画を見に行って。 おひとり様ライフを楽しむ日々。 出会いなど特になく、ごはんに行くのも会社の同僚か、大学時代の友達で、 月に二回ほど、誰かと外食できればいいほう。 平々凡々すぎる日々を飽きるまで繰り返した。 通勤ラッシュにもまれ、携帯もまともに見れない車内で押しつぶされる朝。 出勤後、ホワイトボードにかかれた本日のスケジュールを見つめて 今日も遅くなりそうだなあ、なんて思いにふけながら、パソコンに向かう。 ランチも同僚と長い行列に並んでみたり、レタスとトマトがたっぷり挟んでいるサンドイッチを買ったり。 いかにもOLです! みたいな生活を続けていても、どこか物足りない。 週末になると、むなしく感じる。 自分は、何のために仕事をしているのだろう。 鞄や財布、時計も自分が好きなものを買った。 ごはんもおいしいところを探して、足を運んだ。 仕事もそれなりに順調で、人生謳歌しているようにみえるが 全然楽しくない。 お酒を飲むといつも思い出す優のこと。 「あー。優くん何してんだろうねー今」 「また、優君のこと言ってんのー?」 同僚ももう飽きただろう、この話題。 私も重い女だ。 別れたあとになってこんなに恋しくなるなんて 人生って本当にうまくいかない。
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