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「今回、あの椿を百鬼夜行路へ通すには、あの糸を切らなきゃいけない。」 夜魅の一言に、冷たい夜の空気が、一層ピンッと張り詰めたように感じた。 「椿の木は、付喪神じゃないのか?」 「植物は"物"じゃないから、似てるんだけどちょっと違うんだよね。」 物質として姿を持つものは、こちら側との縁が強すぎて、百鬼夜行路を通りすぎて百鬼夜行に合流するまでに消えてしまうのだという。 「でも、あの糸を切ったら家はどうなるんだ?」 「守るものが居なくなった場合、そこには空白ができます。そういう場所には、厄が溜まりやすくなります。」 答えたのは悠真だった。 「厄?」 「明確な形はありませんが、"よくないもの"です。」 悠真の声は、ずいぶんと事務的だ。 「あの糸を切れば、椿を百鬼夜行路へ通すことができる。でも、あれだけのものを断ち切るとかなり負担がかかるよ。」 夜魅が、ジッと柊平を見上げる。 つまり、今回、撫で斬りを使わないという選択肢はない。 柊平は即答できずにいた。 目は、淡く青い光を見つめたまま。
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