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「コマ、僕たちも準備しよう。」
椿の木の元へ道を渡っていく柊平の後ろ姿を見ながら、悠真はコマに言う。
それを聞いたコマが、首から提げていた赤いポーチから取り出したのは、生成色の手拭いだった。
「こんな簡易なんで大丈夫なんか?」
「簡易だからいいんだよ。」
染色されていない、糸の色そのままのその布は、如何様にも染めることが出来る。
悠真は、場所を移動することなく、その手拭いを片手で広げる。
その垂れた薄手の布は、柊平の背中を避け、いましがた姿を見せた椿の木の少女だけを透かす。
「あとは、百鬼の若さんの腕の見せ所やな。」
コマは、まだ頼りなさの残る旧家の主の後ろ姿に目をやった。
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