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空色の被衣が、時おり吹く風に裾を揺らす。
「今夜は、よろしくお願いいたします。」
椿の花を染め抜いた美しい振り袖姿の、儚げな少女が綺麗な所作で頭を下げる。
人間なら、柊平や悠真と同じ年頃だろうか。
「こちらこそ。夜魅、提灯を。」
夜魅が、椿の木の少女に咥えていた提灯を渡す。
「それが、百鬼夜行で必要な明かりだ。百鬼夜行路の案内は夜魅がしてくれる。百鬼夜行路は俺が開くから、この木から切り離したら俺たちについて来て。」
柊平の説明に、椿の木は小さく頷く。
それを確認すると、柊平は左脇に差した撫で斬りを抜いた。
細い月の光でも、その刃は鋭く光る。
柄を握る左手に力を込め、右足を半歩前へ出す。
家を守るように伸びる青く淡い光を放つ糸に、慎重に狙いを定めた。
背中に力を入れ、振り下ろそうとしたその時。
強く腕を掴まれる感覚に、柊平は思わず動きを止めた。
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