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逢輝幻影
「私にはお前と象鬼を除き五人の僕が居た。それがどうだ。僅か七日足らずで六人を殺された。私が力を与えた六人だぞ。しかも魂を私に回収させないように、この世の在るべき方法で殺したのだ。この私に仇する愚か者め。必ず見つけ出し、冥府に落としてやる」
没鬼の怒りを体現するかのように、黒い気が蠢きながら滲み出ていた。
それは触れる者全ての生命を吸い尽くすかのようにじわじわと広がり、咲は逃げるように梨沙の背後に隠れた。
「梨沙よ、用心しろ。奴は必ずお前の元へ来る。私が新たな僕を調達する前に死す事は許さんぞ……」
そう言い残し、没鬼は瞬く間に消えた。
唐突に象鬼の死を告げられた梨沙。
意識せず、瞳は緋色に輝いていた。
「お姉ちゃん、聞いた。ゾウちゃん、死んだって。嘘みたいね。昨日あんなに元気だったのに。ゾウちゃん、失敗したのかな? いや、違うよね。あれだけ頼もしいゾウちゃん、初めて見たもん。私の事、梨沙って呼び捨てにしてカッコつけてさ。嫌な気しなかったんだよ。でも、もう……会えないんだね」
梨沙はそっと瞳を閉じ、涙を滲ませていた。
会って1ヶ月余りの象鬼との生活。
醜い風貌に似合わず、どこか憎めない不器用な男。
全てを隠し、姿を消し、人知れず死んだ哀れな象鬼。
梨沙は決めた。
「お姉ちゃん、殺るよ。今晩、地獄橋で仇を討つ!」
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