逃捨亡落

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蒸し暑さが残る初夏の夕暮れ。 宏樹は隣町の沼田町へ向かう為、寂れた農村を歩いていた。 母の実家のある地国村は5歳の頃に尋ねて以来。 10年ぶりに訪れたこの土地に懐かしみはなく、呆れるほどの田舎ぶりに強く落胆していた。 (何だよここ。本当に何もないじゃん。はぁ、父さんと居れば良かったかな) 両親が離婚し、宏樹は尊敬する父ではなく母を選んだ。 離婚騒動で情緒不安定な母を想う子心からである。 (コンビニまで徒歩30分か。ここでやっていけるかな……) 人一人居ない寂れた農村を、少しばかりの後悔を胸に歩み行くのであった。
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