半分開かれた社会の窓の崩壊

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 三月のある昼下がりだった。  わたしは分厚い灰色の雲が広がる空の下、ひとり帰路に着いていた。高校を出、ぼんやりした頭でふらふらと進む。風邪気味だったのに無理して登校したら、一気に熱が上がってしまい、やむなく早退したのだ。  住宅街を抜け、やがて人通りの少ない遊歩道に入る。片側に遊具のほとんどない公園があり、もう片側には申しわけ程度の観葉植物たち。石畳の舗装された道に沿って、硬そうな葉っぱがところどころ飛びだしている。  相変わらず薄気味悪い場所だ。いくら自宅への近道とはいえ、あまり通りたくない道である。  早く帰りたい。そんな気持ちが増す中、わたしはとうとう歩くのすら苦になってきた。 「やばいなー、これ」  ひとりつぶやき、よろよろと公園のほうへ足を向ける。幸い、近くにベンチがあった。あそこで少し休もう。わたしは全身の力を振り絞り、どうにかベンチに腰をおろした。ひんやりした感触が、このときばかりは心地よかった。  わたしはちょっとでも楽になろうと思い、うな垂れる。頭が重たい。めまいもする。体に力が入らない。困った。動けないかもしれない。
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