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カーテンの外で控えめに声をかけて、
「明日担当させていただく麻酔科の浦野です。少し説明と確認があります。今よろしいですか?」
と聞かれても、ただただ明日を待つだけで不安が募り、あれこれ考え込んで寝てるだけの私には、嬉しい来客だった。
起き上がり、「どうぞ」とこたえると、
入ってきた麻酔科医は、同い年くらいの男性医師で、話しやすい印象で安心する。
「よろしくお願いします」とこちらも改まって挨拶をした。
ベッド脇まできて、手に持ったメモ用紙に人体模型のような絵を書き、何処から麻酔の管を注射するのか、胸の下から下半身だけの部分麻酔であることなど、詳しく、時折、絵をペンで指しながら説明してくれた。
「このように背中から麻酔を入れるので、背骨を確認させてください、そのままで大丈夫ですので、少し後ろを向いていただいて、すみません、すこし触ります」
先生に背中を向けると、背骨の真ん中あたりをグイグイ押されて、骨がポキっと鳴った気がした。
線の細い見た目と言葉とは違い、想像したより強く押されて、骨がなる音に思わずクスリと笑ってしまう。
「大丈夫ですね、まっすぐ入れられる場所で、明日はここから入れます。」
先生にいたっては、変わらない表情で、向き直っても何も聞こえてなかったように、注射の位置確認をしただけで、メモ用紙に走り書きをしていた。
さっき書いてくれた人型の絵に、第何番目かの胸椎に注入するのかをきっとメモしているんだろうと勝手に想像する。
注射されることを想像して、少し怖くなった。
「術後はしばらく麻酔が効いていますが、数時間で麻酔がきれたあと、その後は傷口が痛みますが、自身で麻酔の入ったボトルのボタンを押すとチューブを通して麻酔が注入できるような管を、同時に先に背中に通しておきます。痛みを抑えるよう術後にも一晩だけチューブだけ残すので、最初にその措置も行いますが、それ自体は痛みはないので安心してください。使い方は、また明日説明もします。」
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