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一通りの説明と確認を済ませると、 「何か不明な点や、不安な事はありませんか?」 と優しく聞いてくれた。 以前から、麻酔のことは、すごく不安だった。 その原因として、中学からの親友が、個人病院で出産した時、麻酔が聞かずに帝王切開をして、メス入れた瞬間に 「痛いー!」と叫んで、そのまま緊急で全身麻酔に切り替わり、飛んでいく意識のなかで、「先生!搬送しますか?」と聞こえたのが最後、次に目が覚めた時には、全てが終わっていて、産まれた後だった。 そんな実体験を、聞かされていたからだ。 そんな友達の体験を説明したあと、 「そんな麻酔が効かないってこともあるんですか?」 と質問すると、初めてポーカーフェイスを壊して驚いたような顔をして苦笑いをした。 「それは初めて効きました。麻酔のあとは、効いているか普通は確認するので、痛みを感じるなんてことはないんですが…、ここでは、氷を使って、確認してから切開するので、そんなことは一度もないです。明日は、私が、念入りに確認しますね、安心してください。お友達は、麻酔が効きにくい特異体質だったのかもしれませんね、確認が足りなかったのかはわかりません。」 「変なこと聞いて、すみません。」 「いえ、そんな話を聞いたら、不安になるのは当然です。さっき氷を使ってと言いましたが、痛みを感じる神経と、冷たいと感じる神経が同じなので、氷を肌に当てて冷たいと感じてる間は始めません。冷たいと感じなくなるまで確認してから始めるよう、市川先生にも申し送りしておきます。明日はいつも以上に念入りに確認しましょう。」 いつも以上に、心配し過ぎている患者と思われたようで自分が恥ずかしくなり、 「よろしくお願いします」 と頭を下げた。
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