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どうして気の合う彼にさえこんなことを思うのか、自分でも理解ができない。会えばいつだって楽しいのに、今は余計なことを考えなくてはならなくなったからだろうか。 華の金曜日。ともあればもちろん高谷から何かしらの連絡が来るとは思ったが、私は職場の後輩の早耶を飲みに誘って会社を出ていた。 チェーン店の安居酒屋に二人で入ると、ほぼ満席状態の店内に圧倒された。 「思ったより混んでるね」 私がそう口にすると、 「席空いてて良かったですね」 と言いながら、早耶がタッチパネル式のメニューを覗き込んでいた。 早耶の彼氏が高谷の友人だったことから、高谷とも仲良くなった。彼と二人でいることよりもみんなで集まることの方が好きな早耶。はじめの頃、早耶の彼がひどく気まずそうにしていたのを見て不憫だと思ったものだ。それも懐かしいほどに、その彼とも仲良くなってしまった。 「そういえば、昨日別れたんですよね、彼と」 思い付いたように彼女がそんなことを言った。あまりに自然に言うものだから、私は一拍置いてから危うくカルピスチューハイを吹きそうになって口を抑えた。 「えっ」 「いやもう、かなり冷めてたんで、連絡もほとんど取ってなかったんですけど」 最近はあまり4人で集まっていないとは思っていたが、そんな素振りは少しだって見せなかった早耶に驚いてしまう。 「え、やっくんも冷めてたの?」 冷静で、私の前では甘々な雰囲気はすこしも出さなかった彼を思う。早耶にぞっこんだったのは彼女から聞いていた。 「いや、話し合おうって言われて一応話し合ったんですけど、冷めちゃってるんで話すこともなかったんですよね、私は」 その言葉が、数日前の元彼からの文字を浮かばせた。 「色々と腹立つこともあったし、高谷に愚痴聞いてもらおうと思って連絡したら、亜希も誘っていい?って言われて断る理由もないんでいいって言ったんですけど、なんで亜希なんですかね」 「は?」 それは、中途採用で入って来た同じ職場の女の名前だった。早耶が先に仲良くなったのをきっかけに3人でよく飲みにも行っていたのだが、途中から私は疎遠になっていた。疎遠になる前は何度かやっくんと高谷と5人でも遊んでいたが、今でも高谷が亜希と連絡を取っているとは微塵も思っていなかった。だって、彼は私が亜希のことを心底嫌っているのを知っているはずだから。
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