プロローグ

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クリスマスは苦手だ。 きらびやかな装飾、御馴染みの陽気なメロディ、はしゃぐ子供達に、何となく浮き足立つ大人。 キリストさんには縁の無い人間が過半数を超えるこの日本の、何の為、誰の為だか分からないこのイベントが、俺は苦手だった。 子供の頃はそれなりに楽しんでいた。 それこそサンタクロースを信じてプレゼントを待っていた可愛い時代もあったし、恋人と甘い時間を過ごした事もある。 それは今でも良い思い出だし、かつての自分と同じようにイベントを楽しむ人々を否定したりはしない。もちろん、自分が独り身だからって仲睦まじいカップルに向けて舌打ちなんてしない。 俺が苦手なのはイベントそのものではなく、どちらかと言えば「サンタクロース」という赤いオジサンだ。 昔は憧れていた存在も、今の俺にとっては天敵でしかなかった。
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