プロローグ

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「ミッキー先生、先生はサンタさんに何頼んだの?」 「先生、サンタさんは私にもプレゼントくれるかなぁ?」 「ねぇ先生。この病院、煙突ないけどサンタさん大丈夫かなぁ?」 「ねぇねぇミッキー先生、サンタさんって本当にいるの?」 そう言って見上げてくる純粋無垢なキラキラとした瞳が、俺は苦手だった。 どう答えるのが正解か。 正解はもちろん「サンタは居ない」だが、それを夢見る彼らにハッキリ言う度胸などなかった。 だから代わりに 「もしも何かくれるってんなら俺は車だな。出来ればBMW。」 「いい子にしてればもらえるんじゃねぇの?」 「煙突がなきゃ窓とかドアから勝手に入ってくんだろ」 等と毎年適当に答えるのだ。 心底信じているヤツらはまだ良い。 一番厄介なのは、半端な年頃の、サンタを信じきれなくなってきているヤツらだ。 自分で気付いたのか誰かに言われたのか知らないが、サンタという存在に疑問を持ち始め、しかし信じていたいと思いながら尋ねてくる。あの不安定に揺れる小さな瞳が、何よりも苦手だった。 「お前がいると思うならいるんじゃねぇの?」 毎年そうやって、答えになっていない曖昧な答えで誤魔化していた。 そして、今年もそんな季節が来たなぁ、と憂鬱になり始めた、ある年の12月半ば。 俺は、サンタクロースに出会った。
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