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今年22になる息子がソファーでうたた寝している。
半年ぶりに帰省して来たと思ったら、明日にはもう名古屋に戻ると言う。
もう少しゆっくりしていけばいいのにと思うけど、就活で忙しそうな彼には身体に気をつけてとしか言えない。
大きい図体をしていても、寝顔には可愛かった小さい頃の面影が残っている。
いくつになっても、子どもは子ども。
寝ているのをいいことに、久しぶりにまじまじとその姿を見つめた。
少し広いおでこも、形のいい眉毛も、長いまつ毛もあなたにそっくり。
俺には似ないでほしいと言っていた鼻の形も、だんだん似てきたよ。
あなたは残念がるだろうけど、私はそれが嬉しいの。
柔らかなくせ毛も、細長い爪の形も、あなたに似て良かった。
この子の半分は、確かにあなたで出来ている。
「何も用はないんだけど。」
そう言いながら、まめに電話をくれる気遣いも。
「母さんが俺の顔を見たがってるだろうと思って、車飛ばして来てやった。」
そんな自惚れを口にして、会いに来てくれる優しさも。
本当に笑っちゃうぐらい、あなたに似ている。
この子を私に遺してくれて、ありがとう。
でも、やっぱり半分だけじゃ足りないから、いつか私が天国まで会いに行くね。
きっとあなたも私の顔を見たがっているだろうから。
END
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