白猫の女の子

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「すみません。花束をお願いしたいのですが……」  学校の帰り道。花屋に立ち寄った俺は店員に声を掛ける。  希望を伝えて、色取り取りの物にしてもらった。  ほのかは花がとても好きで、花屋を見付ければ、よく立ち止まって見ていた。  嬉しそうな顔をして「綺麗だね」って微笑む彼女は可愛くて、俺の好きな姿のひとつでもあった。  鮮やかな花達を見て、自然と心が和む。  ほのかも喜んでくれるだろうか? 「月に一度、花を買って行ってくれますね。彼女さんにですか?」 「はい」  店員に笑顔で答え、お礼を述べてから店を出る。  大事に花束を抱えて、ある場所にと向かった。  ほのかに会えると言うことで、喜びはある。  だけどその場所はある意味、忌まわしく、立ち寄りたくない場所でもあった。  ――ほのかはこの世にいない。  猟奇的な人間の手によって、殺されてしまった。
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