白猫の女の子

13/26
前へ
/204ページ
次へ
 シートが音を鳴らすのは不思議なことじゃない。  風が吹けばそれは自然なことで――でも風は吹いていなかった。  頬を撫でるような微かな感じも、辺りの木を見渡しても、風の気配は一切なかった。  何だ……?  何故か妙に気になった。嫌な胸騒ぎみたいに、ドクドク鼓動が速まっている。  いや、気にするようなことじゃないか……。  ふぅと息を吐いて考えを払拭させる。  シートが音を立てることを、疑問に思う方がおかしいよな。  何をバカなことに引っ掛かっていたのだろう? 自分自身に苦笑して、今度こそ歩き出した。 『――――新っ!』  ――まさかほのかが。霊体の彼女が俺に助けを求め、花束のシートを鳴らしたなど。誰が思うだろうか?  もちろん霊感のない俺は彼女の姿など見えず、その場を離れていった。  ――恐怖に立ち竦むほのかの前に、青い炎が揺らめく。  かぱりと大きな口が開くと、ほのかの霊体を呑み込んだ。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加