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「ウオオオオオオ!!」
低い、雄叫び。
腹の底から出た地鳴りのような声に、神社から出ようとしていた俺は驚きに足を止めた。
獣の声のようであって、今まで聞いたこともないようなもの。
何の声だ……?
興味本位と言うよりかは、恐る恐る。その声の正体を確かめるべく、境内の中に戻る。
じゃり。踏み締めた砂利が音を出し、その瞬間、目の前の光景に目を見開いた。
「な……。何だ、あれ……?」
境内の中央に立っていたのは、人――。
パッと見た感じ、華奢な体型は女性に見える。
だが様子がおかしい。
頭を垂れる女性は人間では有るまじき、髪も全身も緑色をしていた。
足元の地面から何かがうにょうにょと伸び、それは棘(とげ)のある蔦(つた)。
それが何本も現れて、中央に立つ女性に巻き付いていく。
やがて1本の太い蔦が太股を、腰を、胸を巻き、顔の横で真っ赤な花を咲かせると、女性は俯かせていた顔を上げた。
女性の顔を見て、ごくりと唾を呑み込む。
信じられない光景に、言葉を失った。
「…………ほのか……?」
口はない。目だけの顔が俺を捉えると、緑色した女性はにたりと笑った。
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