白猫の女の子

14/26
前へ
/204ページ
次へ
「ウオオオオオオ!!」  低い、雄叫び。  腹の底から出た地鳴りのような声に、神社から出ようとしていた俺は驚きに足を止めた。  獣の声のようであって、今まで聞いたこともないようなもの。  何の声だ……?  興味本位と言うよりかは、恐る恐る。その声の正体を確かめるべく、境内の中に戻る。  じゃり。踏み締めた砂利が音を出し、その瞬間、目の前の光景に目を見開いた。 「な……。何だ、あれ……?」  境内の中央に立っていたのは、人――。  パッと見た感じ、華奢な体型は女性に見える。  だが様子がおかしい。  頭を垂れる女性は人間では有るまじき、髪も全身も緑色をしていた。  足元の地面から何かがうにょうにょと伸び、それは棘(とげ)のある蔦(つた)。  それが何本も現れて、中央に立つ女性に巻き付いていく。  やがて1本の太い蔦が太股を、腰を、胸を巻き、顔の横で真っ赤な花を咲かせると、女性は俯かせていた顔を上げた。  女性の顔を見て、ごくりと唾を呑み込む。  信じられない光景に、言葉を失った。 「…………ほのか……?」  口はない。目だけの顔が俺を捉えると、緑色した女性はにたりと笑った。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加