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体に巻き付く1本の蔦が向かってきた。
呆然と立ち尽くすだけの俺。スピードが速いと言うこともあって、それを躱すことは出来なかった。
ビッ! と通り過ぎていき、棘は左腕の皮膚を裂いた。
火傷したみたいな熱い痛みと共に、裂かれた箇所から血が流れる。
「うぅ……!」
痛みがようやく我に戻す。
左腕を押さえながらよろりと後退し、混乱に満ちた目で正面を見つめた。
……何なんだ? 目の前にいるものは……?
妖か? 幽霊か? 怪物なのか……?
漫画の中に出てきそうなモンスター。
だけどほのかに似た女性――。
意味が分からず、現実が理解出来ず、困惑を極めていたが、頭の中では警鐘が鳴っていた。
――――逃げないと!
目の前のあれが怪物であれ幽霊であっても、危険なことに変わりはない。
このまま対峙していれば、殺される――!
だが意思とは反して、金縛りに遭ったように足が動かない。
それどころかガクガク震えてきて、双眸(そうぼう)には恐怖が宿った。
そんな俺を見て、またにたりと目を細める女性。
うねうねと何本もの蔦が蠢(うごめ)き出した。
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