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先程肉を裂いた蔦が背後から戻ってきて、右手首に巻き付いた。
棘がくい込み痛みが走ると、ゆっくり両足が宙を浮く。
体が持ち上げられ、ぽたぽたと赤い雫が落ちる。
何とか逃れようともがくが、地面から伸びてきた蔦に固定される。
ぴくりとも動けなくなると、いつの間にか目の前に女性が立っていた。
緑色をした目はあるものの、瞳はない。
不気味な目が俺を捉えると、ゆるりゆるり顔を近付けてきた。
まるで匂いを嗅ぐように。まるで愛撫でもするかのように。
首筋に擦り寄り、ある位置で動きを止めた。
――なかったはずの口が、かぱりと開く。
耳元まで裂けた大きな口は、首元に噛み付いた。
「――ああああ!!」
じゅるり。血を吸われ、肉を喰われる。
今まで体験したことのない痛みに大きな声を上げ、動かない手足を動かそうとする。
しかし拘束から逃れることは出来ず、助けを呼ぼうと口を開いた。
「誰か――!」
だが別の蔦で口を塞がれ、助けを求めることも出来なくなってしまった。
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