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『ただ振るうだけでいい。それだけであいつを倒せる』
頭の中に直接響く声。声色で白猫だと分かる。
……何だよ。怪物が現れて悪魔とか言われて……。
猫がやって来たと思ったら喋って助けてくれて、その上剣になって……。
「意味が分かんねーんだよっ!」
叫ぶと女性が蔦を向けてきた。『きたぞ!』と言われ、ヤケになって剣を横に振った。
鍔に巻かれている鎖の先にある十字架が、チャリと音を鳴らす。
「グオオオオ!!」
斬れた蔦はジュッと燃え尽きる。何本も斬られた部分の蔦からはぽたぽたと青い雫が落ち、女性は苦しそうに声を上げた。
『核の位置は心臓と同じ場所だ。そこを突け』
ふらふらと立ち上がったが、苦い顔をして女性を見つめるだけ。
『どうした!? 早く倒さねば、君が危なくなるだけだぞっ!』
「あれが怪物だとしても……。ほのかに似ているんだ! 俺にほのかは倒せないっ!」
『バカか! 魂が喰われた以上、元に戻らないと言っただろう!? それに喰われてしまったら彼女は輪廻転生することも出来ない。でもあの悪魔を倒せば、彼女の魂は救われるんだぞ!』
「……救われる?」
その言葉にぴくりと反応する。
『そうだ。救ってやれば天に昇り、彼女はいつの日の未来に、生を宿して生まれ変わる』
まるで子供を諭すように言われれば、目から涙が流れ出る。
ぎゅっと剣を握り締めれば、雄叫びと共に走り出した。
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