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「うおおおお!!」
向かってきた俺に、顔を歪めながら残りの蔦で攻撃をしてくる。
腕や頬と切り傷を負ったが、関係なしに走り抜けた。
為す術がなくなった女性が、ハッと目を大きくさせる。
そんな中飛び込むように正面に立てば、握る剣を突き出した。
――グサッ。
細い刃は心臓を貫いた。
と、同時に、女性の全身にヒビが入ると、跡形もなく砕け散った。
そこに残っていたのは、仄かに光る玉。
よろよろと近寄れば、それはほのかだった。
『新――。ありがとう』
にこっと微笑むのは、紛れもないほのかで。ずっと会いたかった彼女だった。
「……ほのか……」
『新。短い間だったけど、あなたと過ごせた日々は幸せだったよ』
目から涙が止まらない。ガランと、力の抜けた右手から剣が落ちた。
『私は凄く幸せだった。だから私のことは忘れて、新は幸せになって?』
「何、言ってんだよ……。俺がほのかのことを忘れられる訳がないだろっ!」
『ありがとう。新――』
にこりと笑ったほのか。思わず彼女に手を伸ばしたが、するりとすり抜けて、触ることは出来なかった。
『さようなら。大好きだったよ』
その言葉を最期に。蛍の光が消えたように、ふっとほのかが消える。
「ほのか……。ほのか……。ほのかぁぁぁぁ!!」
いつの間にか日が沈み、真っ暗となっていた世界。
ただ俺の叫びは虚しく、暗くなった境内に響き渡った。
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