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じーっと。こちらを見つめる八城。
彼女を囲む者も、俺と周平の動きもぴたりと止まる。
まるで時が止まったみたいに、青い瞳に吸い込まれてしまう。
不思議な空気が流れたが、それを破ったのは八城だった。
「ねぇ、君の名前は何て言うの?」
訊ねられるが、視線の先にいるのは俺と周平、啓介の3人。
啓介は自分ではないと分かっているのか、一切口を開かない。
周平は「俺? 俺?」と俺と啓介の顔を交互に見やる。
さっきのこともあって、きっと俺のことだろうなぁ……。
そう思ったがハッキリした確証がなかったので、少しだけ顔の位置を右に傾けてみた。
すると八城の視線も同じように動く。
そぉっと元の位置に戻せば、八城の目も付いてきた。
……猫みたいだな。
「俺は咲間新。隣になったし、よろしくな」
自分のことだと分かったので、当たり障りない自己紹介をした。八城はにっこりと笑う。
「新。よろしくなのにゃ」
何とも嬉しそうな顔をして、俺の名前を呼び捨てで呼べば、ざわり、周りがざわついた。
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