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当然。隣に座る八城に聞こえていない訳はなく、キラキラした目でこちらを見ていた。
「えーと……」
言葉を濁しながら、八城の方を見る。
「じゃあ……。お昼食べたら案内するよ」
「うんっ!」
何とも嬉しそうに答える八城。
やっぱり何か調子が狂う……。
そこに啓介がやって来て、近くの椅子を引っ張ってきた。
周平も机の上にお弁当箱を出し、「じゃあ八城さんも一緒に食べよう」と言う。
その顔がにやけているのは気にしないでおこう。
それぞれがお昼を食べ出し、俺も鞄から買ってきたおにぎりを出す。
だがちょこんと座る八城は食べ出す気配がない。
「お昼ないのか?」
「えへへ。お昼のことは、考えてなかったにゃ~」
にゃははは~と苦笑いする八城。
何とも間抜けと言うか天然ぶりに、思わずこっちも苦笑してしまう。
「じゃあ少ないけど……。1個やるよ」
袋の中からひとつおにぎりを出し、それを八城に渡す。
「え? いいの? これは新のお昼なのに……」
「いいよ。1個あれば充分だから」
そう言えば、じっとおにぎりを見つめる八城。
「新は少食過ぎる。もっとしっかり食え」
啓介が卵焼きを箸で挟み、それを目の前に突き付けてきた。
ほうれん草が巻かれていて、美味しそうな卵焼きだ。
「でも啓介のお昼減るだろ?」
「そのおにぎりひとつに比べれば、減った内に入らん」
と、鼻先に当たりそうな場所まで近付けてきたので、そっと指で摘んだ。
ありがとうとお礼を言って頂く。
しっかりダシの味が利いた卵焼きは、とても美味しかった。
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