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思った以上に時間が掛かり、昼休みの残りは僅かとなってしまった。
しかし案内しない訳にもいかないので、八城と共に校内を歩くことにした。
頻繁に利用するであろう体育館や職員室、保健室と移動教室を足早に案内して回る。
その度に八城は「広い学校だにゃ~」や「雰囲気が違うにゃ~」と興味津々と言った顔をしていた。
案内するのはいいが……。やたらと周囲の視線が刺さる。
瞳の色が青いと言う物珍しさもあるだろうが、特に男共も視線を感じた。
ほわんとした柔らかい空気に、目を引くルックス。
おまけに周平を虜にさせたものを弾ませれば、理由など簡単だった。
図書室を案内したところで、時間的に最後となった。
「八城、そろそろ昼休みも終わるから戻ろう」
「分かったにゃ。それより新」
「ん?」
「ボクのことは八城じゃなく、リリって呼んで欲しいにゃ」
そう言って俺に一歩歩み寄り、じっと上目遣いで見る。
八城も背が高い方だがそれでも俺の方が高く、眼下にある青い瞳はまるで海のように吸い込まれる。
「……いや、それは……」
まだ言っても初対面で、親しい仲じゃない。
それに今日の今日なのに名前で呼ぶようになれば、周平やクラスの男共に何を言われることか……。
僅かに困った表情をして言えば、八城も少し困った顔になった。
「八城って慣れないのにゃ。だからリリって呼んでもらえた方が嬉しいんだ」
「……慣れない?」
その言葉に引っ掛かったのも束の間。
八城は俺の手をぎゅぅっと掴んできた。
「名前はこの際置いておくことにするにゃ。でも大事な話があるから、それは聞いてもらわなきゃいけないのにゃ」
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