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教室に戻った俺を待っていたのは、散々な目だった。
八城の手に掴まれたまま中に入ると、男達の驚いた視線を浴びた。
そこで八城の手は放されたものの、途端に俺ひとりが囲まれる。
「――咲間ぁぁ」
犬の唸るような低い声に、怒りや羨望の目を向けるヤロー共。
「知らないなんて嘘だろ! 八城ちゃんとはどう言う関係だっ!」と、国語の担任が来るまで問い詰められた。
どんなに本当に今日が初対面だと訴えても、聞き受けてもらえることはなく。「モテる男はいいよなー!」そう言って頭を揉みくちゃにされる始末。
八城はこのやり取りを不思議そうに首を傾げただけで、頬杖を付いて時計とにらめっこしていた。
……こっちに来て助けて欲しかった。
やっと5時間目と6時間目が終わり、また八城は男達に囲まれている。
とりあえず今日1日でどっと疲れた俺は、そのまま隣の席で机に突っ伏した。
「おーい新、帰るぞ」
ツンツンと背中をつつく周平。
本当ならこのまま帰りたいところだが、八城の大事な話とやらがあるので帰れない。
「あー……。今日も先に帰ってくれ」
「えー。今日は一緒に帰ろうぜぇ」
昨日帰れなかったからか。妙にしつこく誘ってくる周平。
ついには背中に乗っ掛かってきて、非常に重い……。
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