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ようやくヤロー共の囲みがなくなった時、時刻は5時となっていた。
それも八城の「明日またお話しようにゃ」でなくなったのだから、そのひと言がなければ、まだ囲まれたままだったのだろう。
教室の中にはようやくふたりだけとなる。
周平達が帰ったと言うのに隣でひとりいる俺は、皆から見れば不自然だっただろう。
予習しながら待っていた俺は、んーと伸びをした。
「しかし八城も偉いよな」
「何がだにゃ?」
「ちゃんと皆に受け答えしてさ」
囲まれながら次々に質問されていたが、嫌な顔せずに笑顔で答えていた。
好奇溢れるものばかりで、自分なら嫌気が差すだろうなと思った。
「何だか分からないけど、楽しいよ? こんな経験初めてだ」
「そっか……」
八城が楽しかったならそれでいいか。
教科書を閉じると、八城が椅子を引いてこちらに近付いてきた。
「じゃあふたりっきりになったし。話を聞いてくれるにゃ?」
青い瞳が僅かに揺れ、じっと見つめられる。
まるでこれから愛の告白でも受けるかのような雰囲気と錯覚。
言葉の代わりにこくりと頷けば、八城の小さな唇が開いた。
「――ボクの本当の正体は、白猫なのにゃ」
「――――は?」
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