不穏な視線

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 今日もバイトのシフトが入っていて、もちろん八城も入っていた。  また一緒に店に入ったのだが、ここでもヤロー達に囲まれる。  モテるって言うのも大変だなぁ何て、ひと足先に着替え終わった俺は遠巻きに様子を見る。 「咲間君、今日も指導係よろしくね」 「分かりました」  八城を見てニヤける店長に答えた時、更衣室の扉が開いた。 「おはようございま~す」  事務所の中に入って来たのはひとりの女の子。  茶色い髪をお団子にしたその子は、俺と同い年の子だ。 「あれ、新人さん?」  やって来た時に八城はいなかったのだろう。  囲まれる彼女を見て不思議そうに訊ねた。 「咲間君の紹介で昨日から入ってもらった子なんだ」 「へぇ」  短く答えると、店長がパンパンと手を叩いた。 「ほら、そろそろ朝礼を始めるよ。リリちゃんは早く着替えておいで」 「はい」  八城は急いで着替えに行く。  休憩の合間だった者は仕事に戻っていき、同じように朝礼待ちの者はこちらにやって来た。 「ねぇねぇ。あの子、咲間の彼女?」  事の様子をずっと見ていたお団子の子が、急に訊いてきた。 「いや、クラスメイトだよ」 「ふーん。クラスメイトかぁ」  そこに着替えた八城が戻って来て、妙にニヤける店長の朝礼が始まった。
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