不穏な視線

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 朝礼が終わり、皆は店の中に出て行く。 「じゃあ八城、今日も俺が指導係だから、とりあえず昨日やったことを復習していこう」 「分かったにゃ」  八城がはいと右手を上げる。初めてのバイトだったからどうだろうと思っていたが、嫌な感じはないようだ。  行こうと促すと、それを遮るようにズイっと誰かが割り込んできた。 「ねぇ、あなた何て言うの?」 「ボクのこと? ボクは八城リリ。よろしくなのにゃ」  にこっと微笑むと、その子もにこっと笑う。 「私は森口紗希(もりぐち さき)。咲間とは同期なの。よろしくね」 「昨日入ったばかりで、まだ分かんないことばかりなのにゃ。だからよろしくお願いします」  ぺこりと頭を下げれば、ぷるんと八城の胸が揺れた。  店長がそれを見逃す訳はなく、でれっとした表情になったので、急いで彼女の頭を上げさせた。 「うんよろしくね。青い瞳、綺麗だね」  そう言いながら、守口は先に店に出て行く。 「紗希ちゃん、可愛い子なのにゃ」 「森口もベテランだから、俺がいない時は彼女に訊いて」 「了解にゃっ」  今度はビシッと敬礼した八城。行くぞと言って店に出た。
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